札幌北一条教会
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| 今月のみことば | |
| 「空虚な墓から」 | |
| マルコによる福音書１６章１節～８節 | ||
| 牧師 堤 隆 | ||
| 4月16日主日礼拝説教から | ||
| 「教会の声」説教(2017年4月号) |
| 安息日が終わると、マグダラのマリア、ヤコブの母マリア、サロメは、イエスに油を塗りに行くために香料を買った。そして、週の初めの日の朝ごく早く、日が出るとすぐ墓に行った。彼女たちは、「だれが墓の入り口からあの石を転がしてくれるでしょうか」と話し合っていた。ところが、目を上げて見ると、石は既にわきへ転がしてあった。石は非常に大きかったのである。墓の中に入ると、白い長い衣を着た若者が右手に座っているのが見えたので、婦人たちはひどく驚いた。若者は言った。「驚くことはない。あなたがたは十字架につけられたナザレのイエスを捜しているが、あの方は復活なさって、ここにはおられない。御覧なさい。お納めした場所である。さあ、行って、弟子たちとペトロに告げなさい。『あの方は、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて言われたとおり、そこでお目にかかれる』と。」婦人たちは墓を出て逃げ去った。震え上がり、正気を失っていた。そして、だれにも何も言わなかった。恐ろしかったからである。 。 |
| 「さあ、行って弟子たちとペトロに告げなさい」(7節)は、空虚な墓で「若者」即ち「み使い」が女性たちに告げた言葉です。「弟子たちとペトロに」というところは「弟子たちと、そしてペトロにも」（直訳）と書いてあります。この伝言が時にペトロに伝えられることが強く求められています。ペトロは弟子たちを代表する人物でした。フィリポ・カイサリアでは、主がわたしを誰というかと問われますと、「あなたこそキリストです」と告白出来た人でした。けれども、今やペトロは弟子たちを代表する者ではありません。十字架を前にして主を三度否みました。それで、み使いは「ペトロを筆頭にして弟子たちに」とは言わずに、「弟子たちとペトロにも」と言いました。ペトロが最早弟子を代表する者ではなくなっていたことがこの一言から窺えます。イースターの朝、ペトロはどんな気持ちでいたか想像に難くありません。果てしなく悔やみ、自分の威勢のいい決意も破れ、空しさの中に沈み込んでいたに違いありません。ペトロ自身がもう弟子とさえ呼ばれないと痛切に感じていたはずです。今では主を見捨てて逃げ去った弟子たちを代表する者になり果てていました。
ところが、み使いは「ペトロにも」と言いました。ペトロはこの言葉を伝え聞かされたらどんな気持ちがしたでしょうか。・・・考えてみれば、ペトロの生涯は失敗の連続でした。主が受難予告をされますと、そんなことは言わない方がいいと諫めて、主から「サタン、引き下がれ」と言われてしまう始末でした。数え上げたら切りがありません。そんな失敗の総仕上げが三度主を否むことでした。そんなペトロに主のみこころが伝えられたのが、「ペトロにも」でした。「ペトロにも知らせてやれ」という主のみ心がもたらされました。ペトロは申し訳無くも、どれほど嬉しかったことかと思われます。今月のルデヤ会でペトロの手紙Ⅰを学びました。その３章１９節に「霊においてキリストは、捕らわれていた霊たちのところへ行って宣教されました」とあります。「捕らわれていた霊」とはノアの箱船に入らなかった者たちのことです。主は十字架の後黄泉に下りこれらの死んだ者たちに伝道されたのだとペトロは申します。主はどこにいる魂にも伝道されるとペトロは言いたいようです。自分の経験から言っています。こんなつまらない者にも福音は聞かされる。主を否み見捨て裏切った自分にも伝えられた。この点だけは間違いないことだと、ペトロの胸には刻みつけられていました。「そして、ペトロにも」という言葉を聞かされて、ペトロは胸が潰れる重いがしたでしょうし、何とありがたいことかと思いもしたことでしょう。 これはペトロ一人に限ったことではありません。復活が分からないとか信じられないと言う一人一人のことでもあります。死んだと思ったら生き返ったなどという程度にしか考えない者に、主は「あれにも知らせてやれ」とおっっしゃってくださっています。わたしたちは「そしてペトロにも」に自分の名前を入れたらいいと思います。「そして、堤隆にも」です。ペトロに主の復活を信じさせたのは、この空虚な墓からの「そして、ペトロにも」の一言でした。見て分かる証拠ではなく、全く名前を呼ばれる資格の無い者が主から名前を呼んで「知らせてやれ」と言われている。空しさのどん底から、ペトロは救い上げられました。主は甦ってわたしを呼び出してくださった。それでペトロは主の復活を堅く信じることが出来ました。 ペトロは「そして、シモンにも」と言われたのではありません。肉親の親が名付けたシモンではなく、主が与えたもうペトロという名前で呼ばれました。主に召されたときに与えられた名前です。そして、「お目にかかれる」と聞かされます。ペトロにも、主は会ってくださると伝えられました。裏切られた主の方から会ってくださる。ペトロは「そして、ペトロにも」との呼びかけによって新たな主との交わりが与えられたことになります。空虚の墓からのたった一言が新しい人生のはじまりとなりわたしたちも甦りの主に名前を呼んで呼び出されて新しい歩みを始めさせて頂きたいと思います。 |